AIにファイルを読ませても大丈夫か
「学習されるのでは」「漏れるのでは」への答え
ゴルフバッグのデザイン指示書(工場向け)をAIで作る前に、いちばん気になる点を整理しました。
結論:その2つの心配は、別々に考える必要があります。
「学習されて他社に出る」は、会社向けの契約を使えば、規約で防げます。
「漏れる」は、AIが勝手に出すのではなく、社員が個人のアカウントに貼る、見せる必要のない人にも見える設定になっているといった、会社の内側で起きています。だから「AIを使うか」より「どう使うかを決めて、穴を塞ぐ」ことが対策になります。
「学習されて他社に出る」は、会社向けの契約を使えば、規約で防げます。
「漏れる」は、AIが勝手に出すのではなく、社員が個人のアカウントに貼る、見せる必要のない人にも見える設定になっているといった、会社の内側で起きています。だから「AIを使うか」より「どう使うかを決めて、穴を塞ぐ」ことが対策になります。
心配① AIに読ませたファイルが「学習」されるのでは
会社向けの契約なら、学習に使われません
Claude(Team・Enterprise・API)、Microsoft 365 Copilot、Google Workspace のGeminiは、会社向けの契約では入力・出力を学習に使わないと、公式ページに書かれています。以下は公式ページ(日本語版)の該当箇所(赤枠)です。
「デフォルトでは、当社の商用製品(例:Claude for Work、Anthropic API、Claude Gov等)からのご入力またはご出力をモデルの訓練に使用することはありません。」
(Anthropic公式ページの日本語版より)

出典:Anthropic プライバシーセンター「私のデータはモデルトレーニングに使用されていますか?」(日本語版)
「Anthropicは、サービスから得たお客様のコンテンツ(入力・出力)でモデルを訓練してはならない。」
(訳:商用利用規約 B項「Customer Content」の一文。この規約は公式には英語版のみのため、画像は原文、訳は当社)

出典:Anthropic 商用利用規約(Commercial Terms of Service・英語のみ)(お客様データの権利・学習に関する条項)
「Microsoft Graph 経由でアクセスされるプロンプト、応答、データは、Microsoft Copilot で使用されているものを含め、基礎 LLM のトレーニングには使用されません。」
(Microsoft公式ページの日本語版より)

出典:Microsoft Learn「Microsoft Copilot のデータ、プライバシー、セキュリティ」(日本語版)
ただし、条件があります
- 個人向け・無料のアカウントは規約が別です。たとえばClaudeの個人版は、利用者が許可すると学習に使われます。会社として使うのは、会社向けの契約に限ります。
- Claudeの会社向けプランでも、👍👎のフィードバックを送ると、その会話はAnthropicに送られます。管理者の設定で無効にできます。
- AIが他社の機密を出力した実例は、今回調べた範囲では見つかっていません。
心配② データが「外に漏れる」のでは
実際に起きているのは、AIが渡すのではなく、使い方の穴です
| 漏れ方 | どんなこと | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| ① 個人アカウントに貼る | 会社が決めていないAIに、社員が仕事の資料を入れる。海外の大手企業で、社員が個人のChatGPTにソースコードを入れた例が2023年に報じられた | 使ってよいAIを決める。個人アカウントを使えなくする |
| ② 見えてはいけない人にも見える | Copilotは、その人が見られるファイルだけを探す。全社に公開になっている古いフォルダがあると、原価表などが出てきてしまう | フォルダの権限を先に整理する |
| ③ 怪しい拡張機能 | ブラウザの拡張機能が、AIとの会話を盗んでいた例がある | 入れてよい拡張機能を決める |
| ④ 共有リンクの公開 | AIの会話の共有リンクが、検索結果に出てしまった例が2025年にあった | 共有の設定を管理者が決める |
| ⑤ 文書に仕込まれた指示 | メールや文書に隠した指示でAIをだます手口。今のところ研究者による発見と修正のみで、悪用の報告は確認できていない | AIに送信までさせない。人が確認する |
※順番は当社の判断で、公的な順位ではありません。多くが社内の運用で防げます。
防ぐための対策(御社でやること)
| 順番 | やること | 効果 |
|---|---|---|
| 1 | 入れてよい情報を3つに分ける(自由/要承認/禁止)。取引先名・原価・個人情報は最初は禁止 | 最悪の事態を防ぐ |
| 2 | 会社のアカウントだけで使う。使ってよいAIを一覧にする。個人アカウントは使えない設定にする | いちばん多い漏れ方を塞ぐ |
| 3 | フォルダの権限を棚卸しする。「全員が見られる」状態を解消する | 見えてはいけない人に見える状態をなくす |
| 4 | AIに読ませる専用フォルダを作る。取引先名や単価を伏せたコピーだけを置き、元のフォルダはAIの対象から外す | 万一でも、見られるのは伏せたコピーだけ |
| 5 | AIは下書きまで。承認と送信は人が行う | AIが勝手に外へ送ることがない |
| 6 | 操作の記録を見る。月に一度、権限と使われ方を確認する | 異変に気づける |
※4の専用フォルダは、当社の設計案です。各社が公式に勧める手順ではありません。
正直にお伝えしておくこと
- 「絶対に安全」と言い切れる公的な基準はありません。そのため、契約書と公式ページを一緒に確認し、小さく始めて確かめます。
- 社員の私物のスマホやパソコンは、技術だけでは塞ぎきれません。ルールと教育も合わせて行います。
- 権限やラベルの設定をしても、保護をすり抜けた不具合の前例があります(2026年1月、Copilotが機密ラベル付きのメールを要約してしまった)。だから最初は、公開できる情報から使います。
- 取引先から預かった資料は、秘密保持契約(NDA)との関係を確認するまで、AIに入れません。
進め方のイメージ
イメージ:会社のアカウントの中で使い、外へ出さない
イメージ
1枚の指示書ができるまで(1日の流れの例)
| 手順 | 誰が | 何をする | AIの役割 |
|---|---|---|---|
| ① メモを書く | デザイナー | これまで通り、手書きやメモアプリで「素材・色・口枠・ポケット・付属」を書く。形式は自由 | なし |
| ② 下書きを作る | 推進メンバー | メモをAIに貼り付けて「ひな形に沿って指示書にして」と頼む。取引先名・原価は入れない | ひな形の項目に並べ替え、言い回しをそろえる。足りない項目は「未記入」と表示 |
| ③ 確認・承認 | デザイナー+責任者 | 色・寸法・数量など数字を、元のメモと見比べて直す。確認欄に名前を書く | なし(人が最終判断) |
| ④ 工場へ送る | 担当者 | 今までと同じ方法(メール等)で送る。取引先名・原価・納期はここで人が追記 | なし(AIは送信しない) |
| ⑤ 振り返り | 推進メンバー | 直した箇所と、工場からの差し戻し理由を記録 | 月1回、記録からひな形の改善案を出す |
※時間の目安は、最初の1ヶ月の計測で実際の数字に置き換えます。
下書きのイメージ(入力 → 出力)
デザイナーのメモ(入力)
ネイビー合皮 9型4分割 フードはゴールドで刺繍ロゴ ボールポケット1 小物2 ベルト・ネームタグ付き
AIの下書き(出力)
■ 本体素材:合成皮革(ネイビー) ■ 口枠:9型 / 4分割 ■ フード:ゴールド、ロゴ刺繍 ■ ポケット:ボール×1、小物×2 ■ 付属:ショルダーベルト、ネームタグ ■ 数量・納期:【未記入】←人が記入
進め方のスケジュール(90日の例)
| 時期 | やること | できあがるもの | 社長に見ていただくこと |
|---|---|---|---|
| 1〜2週目 | 現在の指示書5〜10枚を見せていただき、共通項目を洗い出す。入力ルールを決める | ひな形(案)・入力ルール1枚 | ひな形の項目に過不足がないか |
| 3〜4週目 | 過去の指示書・公開済み商品で試す。実物と見比べる | 試作10枚程度 | 下書きの出来、作成時間、直した箇所 |
| 2ヶ月目 | 新商品1〜2点で本番運用。人が確認して工場へ送る | 本番の指示書、差し戻し記録 | 差し戻し回数が減っているか |
| 3ヶ月目 | 推進メンバーだけで回せる状態にする。手順書・ひな形を引き渡す | 手順書、改善済みひな形 | 続けるか・広げるかの判断 |
※各段階で止めることができます。結果が合わなければ、広げる前に見直します。
効果の測り方:1枚あたりの作成時間と、差し戻し回数
指示書の見本(イメージ)
料金(前回お伝えした内容)
| 内製化プラン(90日) | 初期 15万円 + 2ヶ月目以降 月額 10万円 |
|---|---|
| 業務実装プラン (アプリ制作の代行) | 10万〜30万円 |
今日決めたいこと
- プランと開始時期
- 推進メンバー
- 最初の業務
- 残っている心配